ドクター・エベッツと言う名前をご存知だろうか?
彼はビジネス・ベイスのブートレガーと言う事でそれ以上の詳しい事を僕は知らない。
というかよほどのビートルズ・ブート・コレクターでないと彼について知る人は少ないと思う。
1980年代、ビートルズのアルバムがCD化された時、音はクリアになっているもののハイエンドな音質はやがてファンの間で疑問がもたれるようになった。
そのギシギシとした音質はアナログ・レコード(MONO盤)の持つ太く柔らかいそれでいてコンプレッションの固まりのような元来のビートルズ・サウンドからは遠くかけはなれていた。
ドクター・エベッツはそんなアナログの音をCDで再現したのだ。
彼はリマスターしたわけではなくビートルズ・オリジナル・アナログ・レコード初回プレスが持つプリミティブだが素晴らしく勢いのある音源を忠実にCD盤にコピーしたのだ。
これはたぶん80年代にリリースされたCD「THE BEATLES Past Masters-Vol.1に収められた「ラヴ・ミー・ドゥ(Love Me Do)がヒントになったのだろう。
ビートルズのデビュー曲「ラヴ・ミー・ドゥ」には2つのヴァージョンが存在している。ひとつはドラムがリンゴ・スター・ヴァージョン。もう一つはジョージ・マーチンが起用したセッション・ドラマー・アンディ・ホワイトのヴァージョン。後者のヴァージョンではリンゴ・スターがタンバリンを演奏している。このレコーディング・セッションにまつわるリンゴ・スターの屈辱的な話はいろいろな文献やアンソロジー等で記されているゆえここでは割愛する。さてこの二つのヴァージョン、前者はビートルズのデビュー・シングルとしてリリースされ、後者はビートルズのデビュー・アルバム「PLEASE PLEASE ME」に収録された。その後、世界中で前者のヴァージョンが日の目を見る事はほとんど無く後者のアンディ・ホワイト・ヴァージョンが一般的なものとなった。
(12インチ・アナログ等でリンゴ・ヴァージョンは地味にリリースされた事はあったが)
1988年CD「Past Masters-Vol.1」がリリースされた時、このリンゴ・ヴァージョンがやっと日の目を見て収録されそれは大いに話題になった。
この時、CDに収録されたリンゴ・ヴァージョンの「Love Me Do」は既にマスター・テープが存在していなかったため、1962年10月5日にリリースされたイギリス盤シングル「Love Me Do」のミント・コンディションのレコード音源がソースとなっている。
「アナログ・レコード(しかも1stプレス=マトリックスと言われているもの)のオリジナルが持つ音を忠実にCD化する」、このドクター・エベッツの一貫したコンセプトはこの「Past Masters~」の「Love Me Do」がヒントになったのではないだろうか。
ドクター・エベッツのビートルズのアナログ・レコード音源をCD上で再現するその旅は多岐に渡った。
使用する音源は60年代、70年代にリリースされたアナログ盤の1stプレスに限定。モノラルはその重厚感あふれる音圧を、ステレオ盤はその抜けるようなクリアなセパレート感を再現した。しかもイギリス盤のみならず各国盤の持つミックスを丁寧に忠実に再現したものまで発表した。アナログ盤→→CD化、これは「Needle dropping」と言う。
しかし2009年、ドクター・エベッツは突然の引退を表明する。
ビートルズのボックス・セット・リリースが原因である。
真のビートルズの音源がやっとリマスタリングされたと言う触れ込みのオフィシャルCD化。
ポール・マッカートニーはこのモノラル、ステレオのデジタル・リマスタリングCD化にこんなコメントを寄せている。
「ヒスノイズやハムノイズ、その雑音を最新テクノロジーできれいに取り除き、当時のスタジオの中の状態に近づいた音が再現された」
ドクター・エベッツはもうこれで彼の役目が終わったと確信したのだろう。
ところが突然1年も経たないうちにドクター・エベッツは復帰した。
何故、彼が復帰したのか?
昨年のオフィシャル・ビートルズ・ボックス・セットの音源が不服だったのか?
ドクター・エベッツは突然、「オールディーズ」ステレオ盤CD化を発表した!!
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