先日、知り合いの恒例餅つき忘年会に参加した。
この催しは僕が大変懇意にさせてもらっているセレクトショップ(と一言で片付けられない空前絶後、唯一のショップ)のオーナーがが毎年12月に開催。
もう20年近く、いやそれ以上かな?この餅つきに招待頂き参加している。
これまでそのオーナーであるT氏からはお茶会やビーチハウス、個人的な催し、コレクション・ルームにも招いていただき、その都度嬉々として僕は出かける。
何が楽しみかというとT氏の「着こなしの妙」に出会えることだ。
いつ会ってもその外しの冴えに感動させられる。
T氏のファッションはいつ見ても奇抜なのだがとてもさり気ない。
カジュアルであってもフォーマルだし、フォーマルであってもカジュアルだ。
そして誰よりも、どこよりも早く次に来るものを取り入れている。
過去に2回ほど同じものを偶然着用してお会いしたことがあった。
ブルックスブラザースがスペシャルヴァージョンとして復刻したエンブレム付きの紺ブレ。
僕はミラノで手に入れT氏に自慢しようとその紺ブレで餅つきに参加した。
そしたらT氏が同じものを着ていた。
T氏はパリで手に入れたとのこと!
そしてもう1回はニューヨークで手に入れたエルメスのペンシルバニア・ストライプ・ジャケット。
鮮やかなエルメス・オレンジ・カラーの裏地はスイムウェア生地、ポリウレタンとストレッチ繊維のエラスタン、ポリエステルを編み込んだ防寒に優れた素材。
この時の偶然も嬉しかったなぁ。
何しろT氏は僕の着こなしのお手本のような人である。
僕にとって故・加藤和彦氏と並ぶお洒落のスーパースター!
選んだアイテムが一緒である、同じセンス!!だと僕は自惚れる!
大いにハッピーな気持ちになるのだ。
T氏の存在は40年近く前から知っていた。
T氏が70年代前半に立ち上げた小さな奇妙でこれまで見たことのないような空間、そのショップの僕は常連だった。
千駄ヶ谷にあったその小さな屋根裏部屋のような空間には僕が洋書やミュージック・ライフ、平凡パンチなんかのグラビア、はたまた映画ウッドストックなんかで見ていたアーティストやミュージシャン、ヒッピーたちが着こなしていたファッションアイテムが所狭して積み上げられていた。
そこにはミッキーマウスのジャガードセーターやトレーナーなどの日本では珍しいアイテムもあったが僕が何よりも感動したのはユーズドの古着アイテムだった。
ネルシャツやTシャツと共に無造作にデイスプレイされているユーズドブルージーンズのスタイル。
僕はこの店でブルージーンズのメーカーを学び、そのインディゴブルーの褪せた美しさ(今でいう縦目)に魅せられた。
そこには僕がずっと探していたブルージーンズがあった。
それまでどうしても納得のいかなかった日本製ブルージーンズとはまったく違う風合い、肌触り、素材のものがあった。
リーバイス、リー、ラングラー、マーヴェリック、フォーモスト、ワシントンDC 、オシュコシュetc、
あの小さな空間は日本で初めてのユーズド&ヴィンテージショップであった。
そんな店がアメリカにはあるんだということを僕はここで知った。
その店を創設したのがT氏である。
今ではT氏はセレクトだけでなく類を見ないオリジナル・コンセプトで自身のショップを展開、衣食住に至るまで常にどこよりも最先端で日本発信のオリジナルなものを紹介している。
そんなT氏を僕に紹介してくれたのは僕の先輩ミュージックパブリッシャーM氏と鞄メーカーの老舗、そのチーフデザイナーY氏からだった。
その日、新宿ゴールデン街にあるBARで偶然居合わせたT氏を紹介された。
T氏は自身のブランドのカバーオールを着ていた。
T氏はいるだけで輝いて見えた。
眩しいくらいのオーラは今も変わらない。
T氏のご好意で僕がプロデュースするアーティストのT–シャツを作っていただいたこともある。
我が社のエンブレムが入ったスタッフ用の防寒デッキジャケットをお願いしたこともある。
パンフレットの撮影や取材でショップの一部をお借りしたこともある。
我が社のイベントにも足を運んで頂いたこともある。
T氏の話をし始めると僕は想いが溢れて止まらなくなる。
そんな中でもT氏のレンジローバーに乗せてもらった時の衝撃は忘れられない。
その高級サルーン、レンジローバーは塗装が剥がされアルミのボディーがむき出しになっていた。
しかも車内はパネルが外され車の骨格が見て取れた。
蓋が外されたグローブボックスには流木がディスプレイされていた。
新車をそんな風に自分流のアートにまで高めてしまうスタイルはある意味ジョン・レノンがロールスロイスをサイケデリックにペイントしてしまったセンスと同じだと思った。
今ではスタッフはもとよりファッション業界の誰からも一目置かれ、誰もがT氏を「ボス」と呼ぶ。
僕にとってはそのファッションスタイル、ライフスタイル、まさに「ボス」以上「神」に近い存在だ。
今年はT氏がアメリカを訪れて50年になるメモリアル・イヤー。
甘酒、炊き出しの豚汁、そして搗きたての餅を頂きながら、T氏からいつになく長く当時の貴重な話を伺った。
この場所で餅をつくと翌年は良いことが起きる。
そんな念を抱いて僕は、碓めがけて杵を振り下ろす。
寒風吹きすさぶ12月の空の下、2017年が行く。
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