ギターテクニシャンのY君と恵比寿で待ち合わせランチ後、いざ御茶ノ水へ。
御茶ノ水は今も昔も学生街である。
明大の地下駐車場に車を停めたのが13時過ぎ。
いよいよギターシティー探索である。
その日は18時から会食の予定が入っていたから17時目処で切り上げるつもりだった。
前の晩、ネット検索している間に僕はなんとなく12弦ギターに気持ちが惹かれていった。
昔、安物の12弦アコースティック・ギターを中古で手に入れたことがある。
メーカーは新井楽器。
ネックも太く、弦高も高くて物凄く弾き難いギターだった。
その12弦ギターにはトースター型のピックアップが装着されていたから僕はエレキ・ギターの弦を使用していた。
それゆえ、多少の弾き難さは解消されていた。
当時、僕がその12弦を手に入れたのはちょっとその楽器に一目惚れしたからだ。
遠目に見るとそのギターはビートルズの映画「HELP!」の中のワンシーン、「悲しみはぶっとばせ(Yon’ve got to hide your love away)」の演奏シーンでジョン・レノンが手にしている12弦ギターに似ていた。
ジョン・レノンが弾く12弦ギターはドイツ製フラムス。
さほど有名なギターではなかったが多分僕が初めて認識した12弦アコースティック・ギターだった。
そしてその少し後、フォーク・クルセダーズの加藤和彦が弾くエピフォンのB-25タイプの12弦に僕は憧れていた。
フォークル解散後、加藤さんはさらにグレード・アップしたマーチンD-12-20を日本で誰よりも早く手にするのだ。
ジョン・レノン、加藤和彦、この二人の影響、憧れから当時の僕はマーチンD-12-20からは程遠い安物12弦ギターを手に入れる羽目になった。
しかしながら僕が手に入れた安物の12弦ギターはその弾き難さ、鳴りの悪さ、そして弦の張替えに要する時間等の理由からすぐ手放してしまった。
あれから50年、リッケンバッカー360/12WBは手に入れたもののアコースティックの12弦ものはとんとご無沙汰していた。
D-12-20はその後、アンプラグドでエリック・クラプトンが使用しているのを見てなんとなくいいなぁって思ったこともあった。
デヴィッド・ギルモアが手にしている写真を見た記憶もある。
いつも心の片隅に存在しているギターではあった。
御茶ノ水までの車中で僕はY君に12弦ギターを探すことを告げていた。
彼のリコメンドは「ニール・ヤング使用のテイラー」だった。
忌野清志郎がそのモデルを持っていて12弦とは思えないほど弾き易かったとのことだ。
清志郎はテイラーを手に入れそれまで使用していたマーチンD-12-28を手放してしまったらしい。
御茶ノ水で最初に訪ねたアコースティック専門店にマーチンD-12-20が2台ディスプレイされていた。
1台は調整中だったが僕が手にしたもう1台はネックを握った瞬間驚くほど僕にフィットした。
さすがマーチンである。
D-12-20は12フレット仕様で少しだけドレッドノートタイプのD-12-28よりボディも小さい。
1970年製と言うからヴィンテージと言うカテゴリーに属するのかも。
ボディは少し焼けているように思えるが目立つ傷もない。
そしてラウンドショルダーのボディがとても柔らかく美しい。
そのギターを僕はひと目で気にってしまった。
ところが店員がその日に入ったテイラーがあると言う。
Y君が話していた清志郎のテイラーである。
ギブソンのJ-200に似た大型フォルム、年代も80年代と比較的新しくボディも劣化していない。
確かにネックの握りも素晴らしい。
音はキラキラと迫力がある。
それに比べマーチンはやはりヴィンテージの枯れた音質である。
これは迷うところである。
テイラーの12弦は掘り出し物でなかなか個体も少なくモノが出ないそうだ。
まず、1店舗目であるからまだまだ他店舗に出会いがあるやも。
とりあえず他も回ることにした。
アコースティック専門店を軒並み探索するも12弦ギターは需要が少ないせいか品薄である。
それでもギブソンの現行品、サザンジャンボ・タイプのヴィンテージ、そしてマーチンD-12-20は往年の名機として60年代ものが2本試奏出来た。
同機種といえどもかなり個体差がある。
結局、会食時間までのリミットが迫っているので迷った挙句、扱いやすさ、まだまだ80年代ものというギターとしては若い部類に入り経年劣化の問題もなくライブにもレコーディングにも威力が発揮できるテイラー選択に心を決めて最初の店へ。
店員にテイラー購入の旨を伝えるもののもう一度マーチンD-12-20を手に取ってみた。
いや、テイラーじゃない、やはりこのフィット感、他店で比べたD-12-20と全く違うこの感触。
僕の手にジャスト・フィットするのは最初に出会ったこのマーチンD-12-20である。
急遽、店員に「やはり、このマーチンにする」そして頼もしいギターテクニシャンY君には「手のかかるギターかもしれないがメンテナンスはよろしく」って感じで僕はマーチンD-12-20、1970年もの購入を決めたのである。
このギターに憧れて50年。
人生には据え置きされた出会いが待っていることもあるのだ。
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