爆音上映会みたいなものがここ最近流行りである。
デジタル技術でレストアされた映像は確かに綺麗だし音源も実にクリアだ。
THE BEATLESで言えば数年前にZEPP東京で行われた映画「A HARD DAY’S NIGHT」、ここ最近では昨年の 「GET BACK」プロジェクトも同じようにレストアされ、その特別edit版を大スクリーン&フルボリュームで堪能出来ることはファンにとってそれはそれで歓迎される代物である。
でも、なんだろうな?観終わった後、耳の中に残っていた爆音の振動が次第に去ってゆく時に訪れるあの感じ。
ゆっくり心の中に広がってゆくあの虚しい静けさ。
多分、ついさっき体験したあの映像と音源はリアル過ぎるけどリアルじゃないと言うか。。
例えばDisneyチャンネルで繰り返し観ている「GET BACK」は文句なく楽しいし新しい発見もあるのだけれど僕はオーディエンスの声と一塊になって聴こえて来るWashington D.CやLiverpool Empire Theatreのライブ・パフォーマンスの古く圧縮された映像音源データの方がリアルに心を打つ。
つまりレストアされたものはやはり作り物であって作品としてはよく出来ていてもどこか現実とかけ離れている。
リアルタイムでその時代を傍観した人って、その傍観体験が深ければ深いほど密であれば密であるほど往々にしてそんな気持ちを抱いてしまうんじゃないだろうか。
まぁ、そんな事もあってあまり期待しないまま5月16日、東京EX THEATER ROPPONGIでRCサクセション「FIRST BUDOHKAN DEC.24,1981 Yeahhhhhh…...」爆音上映会に足を運んだ。
文字通り1981年12月24日に行われたRCサクセションの初ワンマン武道館のライヴ映像&音源を大爆音で聴くという催しである。
40年近く昔に行われたこの武道館ライブ、僕はその日あの現場にいた。
RCサクセションに関わっていたから当時の雰囲気はよく覚えている。
RCサクセションは長いトンネルを抜けついに日の当たる場所にいた。
では、当人達は実際どんな気持ちだったのだろうか?
RCサクセションを取り巻く状況や環境はその1年前とは、さらにその2年前、3年前とは大いに変化していた。
そんな当時を漠然と思い出しながら開演を待った。
しかし結局のところ現金なもので上映が始まると一気にそんな様々な思いは吹き飛んでしまい清志郎の声に引き込まれてしまった。
レストアされようがバーチャルであろうが神がかったRCサクセションがそこにいる。
で、そこまでの紆余曲折して来た道程や経緯を知っている僕もあの場所にいたのだ。
傍観していただけでなくリアルに時間を共にしていたのだ。
終演後、改めて納得した事がある。
忌野清志郎、こんなにも日本語を丁寧に歌う人はいない、丁寧にだ。
魂を届けるのってそう言う事だ。
この頃思うんだけど日本で言うところのロックミュージックやR&Bってどこか勘違いしてるパフォーマーがいっぱいいるよね?
なんかガナル事がロックだとかシャウトや裏声、ビートまでもが湾曲して解釈されてる。
ステレオタイプのお決まりの歌詞に追いつかないテクニックや押し付けがましいソウルはやかましいだけじゃなく単に歌を放り投げてると言うかその自身の作品にすらリスペクトが感じられない事が多々ある。
日本のロックは育たず、成長しないままそんな風に疲弊していった。
どこか借り物のように誰々風みたいな真似だけの紛い物に成り下がった。
表現者は模倣からオリジナルにならなきゃ意味がない。
どんなに激しくても優しくなきゃダメなんだ。
怒っていても切なくなきゃ響かない。
歪であっても真ん中はまっすぐでなければ届かない。
巻き舌で英語風に歌ったってハッキリ木霊する日本語じゃなければ伝わらない。
そして唯一無二じゃなければならない。
清志郎のパフォーマンスが改めてそんな事を僕に教えてくれる。
今回の爆音上映会が今までのものと違ってエキサイティングだったのはやはりあの時代を「忌野清志郎」とともにリアルに歩んだからかもしれないな。
クールじゃいられなかったのさ。
このイベントを企画、招待してくれた佐野敏也君に改めて感謝。
この爆音上映会を次の世代の人に是非観てほしい。
新しい日本のロックが生まれる事を期待してます。
ROCKER AND HOOKER http://www.rockerandhooker.com/
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